「DC難民」や「放置年金」と言われている、「自動移換」の問題が、先日報道された。
転職時に必要な手続きをしないために現金のままで管理される年金資産が増えている。こうした「放置年金」は約2400億円にのぼり、5年間で7割近く増えた。
何が問題なのか、また報道の論点は十分なのか、考えてみよう。
DC難民の放置年金、自動移換問題とは
「DC難民」や「放置年金」と言われている、「自動移換」のことを、ここでは「自動移換問題」ということにする。
自動移換というのはどういうこと?
自動移換問題とは、企業型DCの加入者が、60歳到達前に企業を退職し、その会社で加入していた企業型DCの資産を、退職後6ヶ月以内に他のDC制度への移換手続き(移す手続き)を行わなかったため、自動的に国民年金基金連合会に資産が移換されてしまうことをいう。
国民年金基金連合会で管理されるのであれば、大丈夫なんじゃないの?と思われるかもしれないが、これがそう簡単ではないため、問題となっている。
自動移換の何が問題なのか?
自動移換の何が問題になるのか?
それはつまり、本人が手続きをしないまま、自動的に国民年金基金連合会に資産が移換されてしまうため、本人が住所変更や改姓したりすると、その変更手続きを本人が行う可能性は極めて低い。
したがって、将来連絡が取れず、資産を受け取り損ねてしまうということが生じかねない。
運用の機会を逃すこととなり、余計な手数料がかかるということも自動移換のデメリットとなる。
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自動移換問題の救済策は?
こんな自動移換問題について、厚生労働省は法改正などで改善を図ってきている。
企業型DC(企業型A)に加入していた人が、中途退職して他の企業に転職し、そこで新たに企業型DC(企業型B)に加入したと仮定する。
この場合、本人は企業型Aの資産を企業型Bに移換する手続きを転職先の会社で申し出て、移換手続きを行う必要がある。
しかし、前職を退職後6ヶ月以内に手続きしなかった場合、国民年金基金連合会に企業AのDC資産が自動移換されてしまうのは先に述べたとおりである。
ところが、企業型Aの資格喪失後、企業型Bに移換する手続きを行わなかった場合でも、本人情報(基礎年金番号、性別、生年月日など)が一致すれば、本人の申し出がなくても自動的に企業Aから企業BにDC資産が移換されるよう、法律が改正された。
2022年9月現在は上記の自動移換の前に、本人情報が一致した場合は企業型Aから企業型Bに資産が移換されることになっている。
また、前職(企業型A)を1年前に退職して、その後新しい会社に入社して企業型DC(企業型C)に加入した場合も救済策が整備された。
企業型Aを退職後何も手続きをしていなければ6ヶ月経過後に国民年金基金連合会に資産が移換されてしまうが、その後企業型Cに加入した際に、本人情報が一致すると、自動移換されていた資産が企業型Cの口座に統合される。
つまり、企業型A,企業型B、企業型Cで正しい情報が登録されていれば、理屈上は企業型DCに加入した者は自動移換されたままの状態の人が減少していってもおかしくはない。
このあたりがどうなっているのかは報道では触れられていない。
しかし、自動移換の資産や対象者数が積み上がっているのは間違いないようだ。データ統合だけではうまくいかないのだろう。
iDeCoとの情報突合が一致した場合など、将来的に法改正の対応などが取られるのかもしれない。
2022年10月から企業型DCの加入者もiDeCoに加入しやすくなる法改正が実施された。
自動移換問題から目が離せない。今後の動向にも注目したい。