こんにちは!今日も確定拠出年金(DC)について学んでいきましょう。
2022年10月の確定拠出年金法の法改正により、企業型DCを実施している会社に勤めている会社員も、iDeCoに同時加入できるようになりました。
従って、iDeCoを利用している人が増えています。
ところで、あなたは、iDeCoの受取方法をご存知ですか?
iDeCoの給付の種類は主に、次の3つです。
- 老齢給付金
- 障害給付金
- 死亡一時金
今回は、一定の条件があるものの、原則60歳以上で受け取れるようになる「老齢給付金」について確認していきます。
確定拠出年金のお金(老齢給付金)の受取方法を考えることは、とても大事なんですよ!
- iDeCoの老齢給付金の一時金は退職所得控除の適用を受けられ、おトク
- 勤務先の定年が60歳の場合のiDeCoのお得な受取選択肢と注意点
- まとめ|iDeCoの一時金は退職所得控除でおトク。今後の税制改正の動きには注意!
iDeCoの老齢給付金の一時金は退職所得控除の適用を受けられ、おトク
最初に結論を言うと、iDeCoの老齢給付金は、年金、または一時金で受け取ることができます。
そして、一時金で受け取る時は、退職所得控除の適用を受けることができます。
- 一般的に、自営業やフリーランスの人は会社員と異なり、退職所得控除のメリットを受けにくいと言われています。
- しかし、iDeCoを活用することによって、会社員と同様に税制上かなりお得な仕組み、退職所得控除を受けることができるようになります。
会社員の人も、会社退職後にiDeCoで掛金を積み立てることによって退職所得控除の枠を拡大させ、iDeCoからの給付をお得に受け取ることができる可能性があります。
確認していきましょう!
退職所得に関する根拠法令を確認
iDeCoの老齢給付金の一時金にかかる税金が、退職所得控除の適用により優遇される根拠を確認しておきましょう。
退職所得控除の適用対象は、法第30条《退職所得》関係|国税庁により確認することができます。
次に掲げる一時金は退職手当等とみなされます。
(略)
13 確定拠出年金法に規定する企業型年金規約または個人型年金規約に基づいて老齢給付金として支給される一時金
つまり、企業型DCやiDeCo(個人型DC)からの老齢給付の一時金は退職所得になるということです。
退職所得控除の計算方法について
退職所得控除の計算方法は、所得税法 |第30条によると、次の通り。
2 退職所得の金額は、その年中の退職手当等の収入金額から退職所得控除額を控除した残額の二分の一に相当する金額(当該退職手当等が、短期退職手当等である場合には次の各号に掲げる場合の区分に応じ当該各号に定める金額とし、特定役員退職手当等である場合には当該退職手当等の収入金額から退職所得控除額を控除した残額に相当する金額とする。)とする。
一 〜 二(略)3 前項に規定する退職所得控除額は、次の各号に掲げる場合の区分に応じ当該各号に定める金額とする。
一 政令で定める勤続年数(以下この項及び第七項において「勤続年数」という。)が二十年以下である場合 四十万円に当該勤続年数を乗じて計算した金額
二 勤続年数が二十年を超える場合 八百万円と七十万円に当該勤続年数から二十年を控除した年数を乗じて計算した金額との合計額
つまり、短期退職等を考慮しない場合、退職所得控除は次の計算式になります。
項目 | 計算式 |
---|---|
勤続20年以下の部分 | 40万円×勤続年数 |
勤続20年超の部分 | 70万円×(勤続年数-20年) |
- 例えば20歳から60歳まで会社に勤めた人(勤続40年)は、2,200万円(40×20+70×(40-20))が退職所得控除額となります。
- つまり、上記例の場合、退職所得(会社退職金やiDeCoの老齢給付の一時金の合計額)が2,200万円以下なら税金がかかりません。
ホントだ!事例の場合、iDeCoの老齢給付の一時金で受け取ると、退職所得控除が使えてお得だね!
退職金やiDeCoの老齢給付は、受取方法を考えることが大事
上記で確認した通り、退職所得控除の枠内に退職所得が収まるなら税金面が優遇される(税金がかからない)ことがわかりました。
でも読者の中には、退職金額が退職所得控除額を超えそうだ、という羨ましい人もいるかもしれません。そんな人はどうしたらいいのでしょうか?
勤務先の定年が60歳の場合のiDeCoのお得な受取選択肢と注意点
勤務先に企業型DCがあり、定年年齢が60歳の場合、60歳で企業型DCの老齢給付金を受け取れるかどうかを確認しましょう。
この時、企業型DCの通算加入者等期間も合わせて確認してください。
iDeCoを活用する考え方
通算加入者期間が勤続年数と同じで、退職後別の企業に再就職する場合は、企業型DCのお金をiDeCoに移行して、iDeCoの加入者となり積み立てを継続すると、積み立て期間が上記の退職所得控除の勤続期間に加算されます。
つまり、年間40万円または70万円、退職所得控除の枠を拡大させることができることになります。実質的な非課税枠が拡大するのでお得です。
(※実際には各種の細かい条件を満たす必要があるため、個別の状況により異なります。専門家や税理士とご相談ください。)
転職先の企業型DCの加入者になれる場合の考え方
すぐに前職のDCの資金を受け取るのか、それとも転職先のDCに持ち運ぶのか、iDeCoに移すのかを検討しましょう。
前職のDCを受け取る(裁定する)場合
転職先の企業型DCに60歳以上での加入はできなくなります。
転職先の企業型DCに資産を統合する
転職先の企業型DCの資格喪失年齢になるか退職するまで、企業型DCのお金を受け取ることができなくなります。
iDeCo(個人型DC)に資産を移す
再就職先の企業型DCの加入者になる前に、iDeCoへの移換手続きを行なった場合、iDeCoの受付金融機関に裁定請求もできますし、そのまま運用を継続することもできます。
再就職先の企業型DCの加入者になった場合は、企業型DCでは原則として複数口座の保有ができないため、特に手続きしなかった場合は前職の企業型DCの資産は自動的に再就職先の企業型DCの口座に統合されます。
まとめ|iDeCoの一時金は退職所得控除でおトク。今後の税制改正の動きには注意!
これまで確認してきたように、確定拠出年金の受取時の税制は優遇されていますが、受取方法や時期をしっかり確認しておかないと、数百万から数十万単位で税金の額が違ってくる可能性があります。
また、60歳定年の企業の場合、再就職の有無や転職先の企業型DCの加入者になるかどうか、iDeCoに資産を移換するのかによって、受取時期や税額が変わってくる点についても注意が必要です。
さらに、上記は現在の税制による考え方ですが、退職所得控除の見直しの議論も始まっています。
問)退職所得控除の仕組みについてお尋ねします。今の制度では勤続20年を境に控除額が増えるような制度になっていますけれども、こうした仕組みが終身雇用を前提としていて転職を妨げる要因になっていると指摘があります。大臣のご所見をお伺いできますでしょうか。
答)退職課税については様々な報道もありますし、今までの議論もあったと承知をしております。骨太の方針については、今後、経済財政諮問会議において議論されるものでありますが、その上で申し上げますと、現行の退職所得課税の仕組みにつきましては、これまでも政府税制調査会におきまして、勤続期間が20年を超えると1年当たりの控除額が増加する仕組みが、転職の増加など働き方の多様化を想定していないなどの指摘がされているということを承知しています。
退職所得課税のあり方につきましては、これまでの与党、あるいは政府の税制調査会におけるご議論、これを踏まえながら、働き方によって有利・不利が生じない公平な税制を構築するという観点から、政府として、引き続き丁寧に議論をしていきたいと、そのように考えています。
今後、退職金にかかる税制が大きく変わる可能性もあるので、政府等で行われている議論の動向にも注目しておきましょう。